June 25, 2023 アメリカのスポーツ界隈で話題の訴訟
今アメリカのスポーツ整形外科界隈では話題になっている、
元タイタンズのNFLスタープレーヤーが2020年に、世界的なスポーツの権威のJames Andrewsの施設で受けたACL repairが不十分で、復帰してしばらくして再断裂、選手生命を断たれたと訴訟を起こしている。Malpracticeだと。
肩関節への興味偏重だが、スポーツを見る以上膝は避けては通れないので膝も少し勉強はしている。
確かに、主流はACLは修復 repair ではなく再建 reconstructionである。昔、再建がスタンダードになる前には、修復されていたが、再断裂も多く臨床成績も悪いため、再建(Ham, Quad, BTBなど)が増えてきた。
が、最近、確かにアメリカでは、修復primary repair + internal braceなどでのaugmentationの論文が一流ジャーナルにも散見される。ただアメリカはインプラント業者とのお金が絡んでいるので信用して良いのかわからない。しかし、新しい手技をしないといつまでも現状の問題は解決されず、innovationは生まれないのも確か。10-20年後は、repair+augmentationがスタンダードかもしれない。
ACL reconではなく ACL repairを選択し、かつ、半月板もしっかり縫合しなかったからだと訴えているようだ。言い分はわかる。Andrewsはなぜこのような巨体で、お金や人としての価値も非常に高いスタープレーヤーに、わざわざまだcontroversialなACL repairにしたのだろうとは思うが。
一つ言えることは、医者や外科医は神様ではないと言うこと。あくまで、現時点の医療でその患者に最適解の治療を、自分の可能な範囲の治療で行うことしかできない。ちゃんとした治療を同じようにしたところで、仮に90%の患者は復帰できても10%、一定数良くならなかったり愁訴が残る。愁訴が残って必ず訴えられるわけではないが、良好なラポールを形成しておくことが一番大事なのだろう。
整形外科で言うと、怪我をした時点で、自分の体が悪くなっているのである。
元の100から30になったものを70-80にするのが誠意杯で、手術で100にすることはかなり難しい。機械じゃないんだから。手術すると皮膚も切るし、筋肉も裂くし、細い血管は焼くし、細かい皮神経も切れる。もちろん関節包、筋膜・筋肉、皮下までごっそり瘢痕で癒着。100になるわけない。それでもなるべく運動だとか生活するのに耐えうるように治すだけ。
どんなにしっかりとACL再建をしても10%くらいは再断裂するし、10年したら一定数膝OAになる。だって我々は神様ではないから。
アスリートのACL再断裂で訴えられたらんだったら、医療ができない、というのが正直なところ。ACLは手術で再建しないとかなりの割合でOAが進行する。僕らは再建するしかないのに再断裂したら訴えられたら馬鹿らしい。バレー、サッカー、フットボール、あんな膝に負担かかるスポーツしたら、一度ACL切れたら、本物じゃない再建のACLなんていつでも切れうるよね。
よく、飛行機に乗るときに、スーツケース預けて壊れたら壊れたら保証しませんってやつ。え、なんで?お金払ってるのに?
ハードディスク壊れて、データ修復を依頼するとき、修復作業に伴いデータがとんでしまう可能性もあるけど、保証しません。
え、なんでなん?こんなにお金払ってるのに?
って思うのと同じ。100%って世の中にほぼない。
僕ら医療だって同じだよね。ちゃんとしたことをしてうまく行かなかったときに訴えられることだけは勘弁してほしい。
ここで、思い出すのが、我らがBoston RedsoxのDustin Pedroia。
2017年に憎きManny Machadoの殺人スライディングで、膝の半月板を負傷。
手術をしたが、症状は良くならず階段も登れないほど、何度も手術を繰り返し、最終的には部分人工関節(UKAだろう)を施行し、引退を表明した。
我らのスタープレーヤーで、人格者、Boston一筋のフランチャイズプレーヤーで、33歳だったがまだまだ活躍が期待でき、より一層円熟味をますであろう時期の怪我であった。
そんなPedroiaは引退の時、Machadoは恨んでいない、あれは自分が新人の時にでも起こり得たこと、もう走らなくていいから大丈夫だ、そして、医者やメディカルは自分が復帰できるように全力を尽くしてくれてすごく感謝している、と。
Machadoは許せないが、当人がこれほど人格者だと、ファンも言うことなくなるよね。タイタンズの選手もどうなのかなあ。
ぜひ早くVaritekとPappy, Pedro, Pedroiaには早くコーチ監督としてBosを率いて欲しい。
**
そのニュースで出てきた動詞Allege
Allege 十分な証拠なしに主張・断言することらしい
言い張っているって感じかな
defendant 被告
コメント
コメントを投稿